第5回上州武尊山スカイビュートレイル120 レースレビュー

私にとってはじめてのウルトラトレイルレース(100km越え)となった上州武尊山スカイビュートレイル120、膝に痛みが出て苦労しましたがなんとか完走しました。

今回はそのレースレビューです。国内では希少なITRA6ポイントの本格レース、来年以降さ参加される方はぜひ参考にしてみて下さい。

今回初めてのウルトラトレイルでしたが私には勝算がありました。一昨年、一人で静岡の海から富士山に登り、山梨側の富士吉田神社まで降りる「一人 STY」にチャレンジ。
17時間ほどで距離70 km、累積標高差4000mほどを走り抜くことができました。その時はゴールの段階でもまだ余裕があり、もう一度同じ行程を繰り返すこともできそうでした。仮に往復していれば140 km・標高差8000mとなり、ほぼ今回のレース並みの距離となります。レースでは未経験でしたがハイキングではそれなりに長い距離を歩くことはしてきており、今回もペースを上げすぎなければ完走は可能だと思っていました。まして一昨年よりも走力は格段に上がっています。

装備品とレースプラン

今回のレースプランは以下の通りでした。

保守的な「完走計画」と、少し頑張って24時間+α程度を狙う「頑張り計画」の2つに分けています。 一方でこのプランにはエイドでの休憩を含めていません。実際にはこの両者の間、30時間切りぐらいが現実的かなと考えていました。

重さのほとんどを占めるのは行動食。スコット・ジュレクによると行動時間1時間あたり、。体重×1gの炭水化物が必要です。私の場合はドロップバッグのあるA5までで16~21時間、A5以降10~12時間と推定され、必要な炭水化物量はA5までで1040~1365g(4160~5460kcal)、A5以降が650~780g(2600~3120kcal)となりました。

行動食としては、以前小川荘太さんのセミナーで知った”ゆっくり燃える”血糖を上げにくい天然糖のパラチノースを使ったドリンク、Challengerと和菓子(すぽーつようかん、エネモチ、せんべい)を中心にセレクト。ジェルは一切使いませんでした。これが奏功し、最後まで胃腸のトラブルはなし。また別の記事で詳しく書こうと思いますが、胃酸過多の方は特にジェルをやめて固形食にした方がいいと思います。
今回はせんべいなどを入れて相当軽量化したつもりですが、それでもA5までで1kgほどありました。加えて水が1リットル。必携品と水、行動食を入れたザックを背負ってみるとあまりに重く、エイドでの補給をあてにして少し減らしました。

レース前日

レース前日、少し早めに家を出て沼田駅へ。事前に予約したシャトルバスに乗り込み、受付会場の川場村役場に向かいます。
必携品はライトなどのチェックがあります。団子汁がふるまわれました。

受付を済ませ、その後は村内巡回シャトルバスで今回の指定宿である「民宿休み石」へ。民宿という名前でしたが20~30人は余裕で泊まれそうな大型の宿で、温泉もありリラックスできました。同室となった120に出場する選手の方々と明日の健闘を誓いあいます。うち一人は昨年完走した方でした。


レーススタート

スタートは朝の5時。宿から会場に行くバスがなんと3時発ということで、2時からボリュームたっぷりの朝食が用意されていました。しかし少し早すぎるような...。のんびり朝食をとっていたらバスは行ってしまい、結局重い荷物を背負ったまま会場まで歩いて行きました。これで足に2km分ぐらいの負担がかかったなと思いましたが、まあ誤差でしょう。
スタート会場はまだ薄暗いにもかかわらず熱気に包まれています。私もトイレを済ませ、スタート位置に着きました。横山さんの「スタート10秒前!」のかけ声からカウントダウンとおもいきや、急にスタート。みなあわてて飛び出します。

前日に雨が降り、ヤマビルの発生が予告されていました。ヒルヨケの食塩が林道のビニールシートに撒いてあるなどヒル対策がところどころにされていました。

レース序盤 ~A4まで

私にとっては完走が必成目標、序盤の二つのピークと剣ヶ峰と武尊山を越えるまではひたすらゆっくり進むというもの。心拍数が150を越えないように注意しながら、やや余裕なくらいのペースで進みます。

ところが序盤も序盤のW1(W1を往復するのでW1は2回通過しますが、その1は1回目です)で、早くも6月の越後カントリートレイルで感じた右膝への違和感が現れ始めました。まだ残り100 km 以上あります。さすがに症状が現れるのが早すぎ!絶望的な気分になりました

なんとか膝をかばいながら剣ヶ峰のピークを登ります。上りでは痛みがないので他の選手に食らいつきながらガンガン登りました。下りは膝をかばいつつなのでどんどん抜かれていきます。続いて武尊山への長い登り。とにかくひたすら登りが続き、いつまでたっても終わる気配がありません。険しさも異常で、 UTMF の杓子山よりキツイんじゃないかと思いました(私は UTMF を走ったことがありませんが富士忍野トレイルレースで経験しています)。

序盤は空もクリアで、まさにスカイビュートレイルの名にふさわしい眺め。



その後は悪名高い上級者コースのエグイゲレンデ登り。せっかく登ったゲレンデをまた駆け下りなければならないという精神をジワジワ削るコースで、賽の河原とはこのことかと思いました。膝はいまやはっきりと痛みを感じます。何度もDNFが頭をちらつきました。ここで無理をすると大阪マラソンも出れなくなるかもしれません。迷いましたが、せめてA5まではたどり着こうと思い、ガマンしながら走りました。

A5に行けばドロップバッグに入れてあるポールを使うことができます。ポールを使えば膝をかばいながら進めるだろう、そう考えてひたすら膝の痛みに耐えました。
ゲレンデで気づいたことがありました。他の選手が苦しそうに登っているゲレンデの急登を、自分はそれほど苦労せず一定のペースで刻むことができました。繰り返してきたトレッドミルの上り坂特訓が生きたのだと思います。この日のためにやってきた努力はムダではありませんでした。

ここまで登りでは次々と選手をパスし、下りで抜き返される展開。しかしレースプランの「頑張り計画」並みの所要時間で来れています。

A4はファントレイルの奥宮さんが担当しています。ゲレンデを降りきった先では大音量の音楽と共に奥宮さんが待ち構えていました。ゲレンデはまっすぐに降りれないほど脚が痛く、カニのように横になって足を引きずりながら下りました。奥宮さんにも「脚痛い?」と心配されるほど。
既に時刻は夕方に近く、ここからはナイトレースです。少し休んでヘッドライトを装着、大声でエイドの方々にお礼を言って出発します。

レース後半 ~A5からゴールまで

A4からA5までどうやって進んだかあまり覚えていませんが、とにかく小刻みなアップダウンの続く厳しいルートでした。21時台になってようやくA5エイドの灯りが見えたときの安心感といったらありません。ペースも頑張り計画から大きく外れていません。

そして、ドロップバッグとポールをゲット!
エイドでは食事をとり、ご褒美のパラチノース大福(榮太樓總本鋪)を食べ、靴下を買えてワセリンを塗り込みました。ジップロックに入れた濡れタオルで顔や汚れた身体を拭き、歯磨きしてリフレッシュです。ロキソニンも飲み、膝にテーピングを施しました。
しかしもう膝は限界です。ポールを使っても足の負担が軽減されなかったら、大阪マラソンの為にも次のA6でリタイヤしよう、そう決めました。

A5を飛び出し、ポールを支えに進みました。ポールとロキソニンの効果ははっきり言って絶大でした。エイドを20分前、30分前に飛び出した選手に追いつき、次々とパスします。膝の痛みは全くありません。上りでも下りでも、明らかに自分がこの位置にいる選手たちと次元の違うスピードで駆け抜けている感じがよくわかります。自分は苦労せず進んでいるのに他の選手を次々と抜き去る、なんて気持ちいい感覚!
あっという間にA6に到着しました。エイドのスタッフと談笑しながら水を詰め替えます。お兄さん元気ですねと言われましたが、確かに全く疲れを感じません。休んでいる他の選手達は疲労が色濃いですが、私はまだまだいけそうな感じ。膝の痛みがないとこんなに楽だなんて。

そして A7に到着。A7でもろくすっぽ休まず、元気に飛び出しましたが...、そこから急に脚が終わりました。
押し寄せる前腿の痛み、よみがえる膝の痛み。どうにもなりません。
それでも登りだけはすいすいと進みますが、下りはどうにもなりませんでした。

夜が明けてきます。ここまでエイドでろくに休憩もとらなかったため、疲労が一気に押し寄せてきました。

ただしこの辺りになってくると、どの選手も限界に近づいており、下りも自分と似たようなていたらく。登りで数人抜き、下りではそれほど抜き返されないという状態になり、少しずつ順位を上げ始めました。最後の雨乞山でラストスパートの選手数名に抜かれましたが、全般的には後半に順位を上げることができたと思います。

雨乞山からのビュー。いよいよ旅も終わりです。

結局「頑張り計画」よりプラス1時間ほど、27時間台でゴールしました。
膝の痛みを考えればがんばり過ぎたくらいの結果です。

今回はなんとかゴールできましたが、とにかくこの膝をなんとかしない限りは今後のトレイルレースは厳しいものになると思います。体重が原因とも思えませんし、走り方についてもっと根本的な改善が必要なのかもしれません。

最後に、主催の皆様、ボランティアの皆様、本当にありがとうございました。
当初はITRA6ポイントをゲットするためのレースだと思っていましたがこの、レース自体が変化に富んだコースで非常に魅力的です。ウルトラトレイルの魅力がたっぷりつまったこのレース、来年も日程が合えば出場したいと思います。

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