私も当日、ライブ中継を見ていました。
まさに川内劇場。競合ひしめくワールドメジャーレースであの展開を自ら作り出す、彼の強さには脱帽です。
川内選手の激走姿は、ふだんランニングやスポーツに興味がない人でも、心を動かされずにはいられないのではないでしょうか。単にすごいなーというだけではなく、オレの日常は果たしてこのままでいいんだろうか、今日は言い訳できないくらいがんばっただろうか...、と自らを省みさせるほどのすごみが、彼の走りにはあると思います。
陳腐な言い回しかもしれませんが、不屈の男という形容がこれほど似合う人もいないでしょう。川内選手はそもそもあきらめることを知りません。
大学は決して陸上の名門とはいえない学習院。
しかし、彼はあきらめません。
学連選抜となり、同校の歴史上初めて箱根路を走りました。
卒業後も、家庭の事情もあり実業団には入りませんでした。
しかし、彼はあきらめません。
仕事の合間をぬって我々と同じく市民ランナーとして練習を続けます。
もちろん、練習のレベルは一般的な市民ランナーと比べるべくもありませんが、立場としては同じです。限られた時間や不十分な環境にもめげず、著名なレースで入賞を重ねていきます。
そして、出場する一回一回のレースでも、彼は決してあきらめません。
序盤から出遅れ、2番手3番手グループにいても、たいてい最後には順位を上げてきます。
後半の彼の走りと表情はメロスのようです。
序盤からトップにたつようなレースでもあきらめません。
その時のベストで走り、全力を出すことをあきらめないのです。
ゴール後の精根尽きた感じは、どのようなレースでも変わることがありません。
レース強さは相変わらずでしたが、2013年の2時間8分台以降は自己ベストを更新できず、男子マラソンの日本代表から引退を表明しました。近年ではレースの高速化が進み、日本人でもトラックで実績をもつ選手が有利となっています。川内選手は年齢的な面からも、これ以上トップで戦えないと思ったのでしょう。
しかし、彼はそれでも戦うことをあきらめていませんでした。
世界の最高峰・ワールドマラソンメジャーズの筆頭であるボストンマラソンで、まさかまさかの優勝。あのレース展開が、あきらめない彼の人生そのものに見えたのは私だけでしょうか。世界選手権覇者のキルイをはじめ、走力でははるかに勝るアフリカ勢が多数エントリーしたこのレース。指先が凍えそうなコンディションの中、仕掛けまくり、最後までねばりまくり、とうとう最後の2kmでトップに立ちそのままゴール。まさに、彼の真骨頂といえるレースでした。
「あきらめない」というのは、単に泥臭くこなすというだけではありません。
彼はレース前の話題作り、レース中の駆け引きまで実に戦上手です。勝つためには知力や天候まで利用し、事前の試走など最大限の事前努力をおしまない。そして、本番レースでは最後までねばる。その点も見習うべきだと思います。
そして、今回のプロ転向宣言。
貪欲に、可能性への挑戦をあきらめない川内選手に触発され、私もボストンを目指すことにしました。
もし出場できたら、短いロード人生の集大成として、全力で走り抜けたいと思います。
奇しくも、彼の母親の本が「走れ!優輝 最後まであきらめないで」なんですね。
まさに、彼を表しているタイトルだと思います。
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